二輪旅行

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陽朔香港旅行〜2〜 深圳でバスに乗る

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さあ、お腹もいっぱいになったしいよいよ中国へ行こう。尖沙咀の駅に戻り、東鉄線という路

線に乗りかえる。ここから中国との国境の町である羅湖(ロウ)へ向かう。国境というのも変な感じだが、香港と中国本土は一国二制度ということで旅行者にとってもまったく別の国のようになる。
羅湖の駅を降りると乗客たちはいっせいにみな同じ方向へ歩き始める。駅を出るとそのまま出国手続きのゲートがあり、さっき香港に来たばかりだが、パスポートを見せて出国する。今度は中国の入国管理があり、黄色い入国のカードを書いてパスポートを見せ、中国に入国となる。実にめんどくさい。
しかしこの国境は現在通過旅客が世界で最も多い国境らしい。香港に大挙して押し寄せる中国人をさばくために、中国でも一番大きな出入国検査場でもあるという。
 
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とにかくこれで中国に入った。ここは深圳(シンセン)の街だ。目の前はだだっぴろい広場になっている。広場横には「羅湖商業城」という巨大なショッピングセンターと深圳の駅、そしてバスターミナルがある。歩いている人の雰囲気もどことなく違う。発展した深圳の街とはいっても、香港の垢抜けた感じとは全く別の、いかにも中国といった雰囲気だ。うまく説明できないけど。
右手にあったバスターミナルに入ってみる。薄暗い建物の中に窓口がいくつかあり、長距離バスのチケットを売っているが、目当てのバスがどれなのか分からない。事前に調べていた情報によると、深圳から地方へ行くバスはこのターミナルではなく、街の中心にある別のターミナルから出ているとか、いや時期によってはこのターミナルからも発着しているとか、情報がまちまちではっきりしなかったのだ。
とにかく聞いてみるしかない。と思っていると、一人の男が声をかけてきた。
「巴士(バス)?」
「是。桂林、陽朔」
桂林(グイリン)というのは広西チワン族自治区の大きな街で、漓江観光の拠点となる市だ。陽朔(ヤンシュオ)というのは桂林から少し手前、漓江の下流にある町で、巨大な桂林に比べてこじんまりとした中に古い町並みを残す旅行者に人気の町だ。バスの行き先としては桂林行きに乗って手前の陽朔で降りる形になる。男は
「桂林?」
と一言確認するとついて来いと言って歩き始めた。広場を横切って反対側の商業ビルの2階に行く。いくつか旅行会社が入っていて、表には中国各地の地名が書かれた看板が出ていた。男は一軒の店の中に入ってカウンターにいた人に何やら言うと、紙にさらさらとメモを書き始めた。
「深圳~陽朔 20:00~7:00 350元」
と読めた。男は手のひらを合わせて顔の横に持っていき寝るしぐさをしてみせる。寝台バスのことだろう。もちろん寝台でないと困るが、350元は高い。7000円だ。高い。
「太貴了(高い)!」
数少ない自分の中国語のボキャブラリーのなかで早速これを使うとは。少し値段交渉してみたが、このバスは快適だからとか何とか言って、全く下がらなかった。交渉はあきらめて男にもういいよとジェスチャーで断った。まわりには他にも旅行会社があるし、何軒か聞いてまわってみようと思って外に出る。するとさっきの男が追いかけてきて、
「次に行こう、着いて来い」
と言って先に歩き始めた。内心もういいよと思いながらついていく。男は
「さっきの店は高くてダメだ、サービスが悪い」
とかなんとか言い始めた。まったく調子のいいことだ。二軒目に入ったところでは同じバスが250元だった。およそ5000円。実際のところかなり疲れていたのでこれからあちこち聞いてまわる気力もなかったのでここで買うことにした。
旅行会社でレシートに記入してもらい現金を払う。バスはやはりこのターミナルではなく、違うどこかから出るようだ。出発の2時間前、夕方6時にここへ来るように言われた。
 
バスの手配も出来たし、夕方まで少し時間もある。ショッピングモールでもぶらついてみよう、と思ったが特に欲しいものもなく、ただ疲れただけで飽きてしまった。ベンチに座って時間がたつのを待つ。まだ日差しもきつい。ただ座っているのも飽きたので近くにあったセブンイレブンに入ってみた。店内で飲食できるスペースもある。冷蔵庫を見ると中国のビールが何種類かある。冷房も効いているし、ここで時間まで過ごそう。
冷蔵庫に「漓江ビール」というビールをみつけた。これから行く漓江の地ビールじゃないか。あとはレジ横にあるオデンのような煮物を適当にカップに入れてもらう。ビールとオデンを持って席に座ってやっとくつろいだ。
 
コンビニで休憩していると入れ代わり立ち代わり、いろんな人がやってきて面白い。ビールが空になったのでもう一本買おうかな、いやあまり飲むとトイレがな、などと考えているうちにいい時間になってきた。
 
チケットを買った旅行会社に行くと、店の前に無造作に置かれたソファを指さされ、そこで待ってろと言われた。荷物を置いておとなしく待つ。もうそろそろ約束の6時だ。しかし誰もやってこない。旅行会社のスタッフは僕のことなど眼中にないように事務作業をしたり電話を掛けたりしている。
6時15分。ちょっと心配になってきた。スタッフにチケットを見せながら、えっとこのバスは・・と聞いてみると、またソファを指さされ待ってろの指示。しょうがない。大丈夫かいな、と思いつつ少しそわそわしながら行きかう人を目で追う。時間だけが過ぎていく。
6時30分。一人の男がやってきた。背が低くハンチング帽、しきりに煙草を吹かせながらウエストポーチには何かの紙束がぎっしり、耳に短くなった鉛筆をはさんでいる。ダフ屋か競馬の予想屋のようだ。男は旅行会社のスタッフに何か言うと、僕の方を見て「ついて来い」と言った。スタッフも頷いている。どうやらやっとバス会社の案内が来たようだ。
 
彼の後について広場の方へ歩いていく。もう一人、中国人の若い男の子も一緒だ。彼も同じバスの客のようだ。広場の中ほどにある路線バスのバス停まで来ると、男はここで待ってろと合図して、どこかへ消えて行った。しばらくしてスーツケースを引きずった中国人の女性二人組をつれて戻ってきた。そのあとも何人か集めてはバス停に並ばせる。あちこちの旅行会社から同じバスにのる客を拾ってくるようだ。何人か揃ったところで、チケットを回収して耳の鉛筆で何事かを書き込むとウエストポーチに押し込んだ。
 
路線バスがやってくる。並んでいた全員で乗り込む。一般のバスは他の関係ない乗客もいっしょだ。夕暮れ時で結構込み合ったバスは立ち乗りの客もいっぱいで、どこで降りるか分からないので案内の男から目を離さないように気を付ける。20分ほどして、市内のバスターミナルの建物の前に着いた。男につられてぞろぞろとターミナルに入っていくと、何台かのバスが並んでいて、そのうちの一台のフロントガラスに、
「深圳―桂林陽朔」
と大きく書かれていた。間違いない。案内の男がそのバスを指さし
「桂林(グイリン)!」
と言った。
 
中国の寝台バスに乗るのは初めてだ。バスのタラップを上がると車内には赤いカーペットが敷いてある。乗車口にはビニール袋が何枚かぶら下げてあって、ここで靴を脱ぐように言われる。脱いだ靴はもらったビニール袋に入れて、車内に持って入る。バスの車内は窓際と中央とで3列の2段ベッドがある。ベッドの幅は肩幅より少し広い程度で、進行方向に足を向けて寝るようになっている。足元には荷物を置く棚があり、棚の下に足を突っ込むようになっている。棚にリュックを置いて、ベッドに横になる。分厚い毛布が各ベッドに備え付けられていた。冷房がけっこうきつく効いているのでありがたい。若い中国人の男子グループが上下のベッドに分かれてお菓子を渡しあったりしてはしゃいでいる。
 
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バスはなんの放送も合図もなく出発した。ターミナルを出るとすっかり暗くなった深圳の街をしばらく走り、どこかから高速道路に上がった。しばらく窓の外を眺めたり、キンドルで本を読んだりしていたが単調な景色と朝からの疲れでストンと寝入ってしまった。
つづく
 
 
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