二輪旅行

旅行、バイク、写真など。

陽朔香港旅行〜3〜 陽朔到着

Yangshuo

夜中、何度かどこかに立ち寄ったような気がしたが夢だったのかもしれない。

窓の外が白み始めたころカーテンの隙間から外を見てみると、霧の中に、こんもりとしたタケノコのような、巨岩というか小さな山が、ニョキニョキといくつも立っているのが見えた。とうとうこの水墨画のような世界、名勝地、桂林市にやってきたのだ。
 
バスはそのまましばらく走っていたが突然なんの案内もなく停止した。ドアが開き、何人かの乗客が降りはじめた。ここはどこだろう。運転手に
「陽朔(ヤンシュオ)?」
と聞いてみるとめんどくさそうに頷いた。
やはり目的地に着いたようだ。荷物をつかんでバスを降りる。先に降りた乗客はどこかへ行ってしまい、田舎のホコリっぽい道路にポツンと取り残された。さて、陽朔の町はどっちだろう。ガイドブックをリュックから出そうとごそごそしていると、一台のバイクが停まって運転手のじいさんが何か話しかけてきた。125㏄くらいの中国製バイクには傘のような屋根が付いている。バイクタクシーのようだ。街の中心までの値段を聞いてみ
る。
「西街、多少銭?」
ガイドによると、西街というのが陽朔の繁華街で、ホテルや土産物屋が並ぶ、旅行者のたまり場であるらしい。そこまで行けば何でもあるだろう。じいさんは、
「10元」
と答えてアゴをくいっとバイクの後ろに向けた。200円か、どれくらい離れているのか分からないがそれくらいなら乗ってみよう。バイクの後ろに乗るとカタンとギアを入れ、まだ涼しい早朝の陽朔の郊外の道をストトトト、と走り始めた。気温はそれほど高くないが湿度がある。周りの山にはまだ霧がかかっている。河が近いのだろう。
 
5分ほどで幅広い石畳の通りの入り口に着いた。

Yangshuo

まだ早朝で人通りはまばらだが、いくつかのレストランが表で朝食に小皿料理や粥を出している。セイロからは湯気がのぼって食欲をそそる。いくつかの店があって同じような内容だったので、適当に一軒の店に決めた。通りに出されたテーブルに座り、どうやって注文するのかまわりを見ていると、後から来た客がそのまま何も言わず小皿に好きな料理を盛り付けて自分のテーブルに持って行った。なるほどセルフか、とさっそく自分も料理を取りに行く。野菜の煮たやつ、ゆで卵、漬物などを適当にとり、鍋でたっぷりと準備されたお粥を店の人にこれも一つと指さす。早朝の朝靄の中、初めて来た町を眺めながら、アツアツの粥とおかずの朝食は気分のいいものだ。
 
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食べ終わってもまだ午前8時。そろそろ通りに人が増え始めたが、この西街のあたりは車も通れない歩行者天国のようなところなので静かなものだ。宿を決めるにしてもまだ早すぎるので少し散歩してみよう。
細い通りはくねくねと曲がりながら入り組んでいて、両隣には今は静かだが夜になると活気が出るのだろう、いかにも観光客向けといった感じの英語の看板などを備えたレストランが並ぶ。そのあいまに中国庶民の味ここにありといった風情の小さな食堂があり、通勤前の人などがどんぶりに入った麺をすすっている。町のはずれには大きな川が流れていて、これが漓江の支流だった。川の反対側は静かなもので、奇妙な形の山がどんよりとした霞に溶けていた。
 
散歩にも飽きて、荷物を降ろしたくなったので宿を探す。観光客でもっている町はあちこちに「GUEST HOUSE」とか「旅社」といった文字があちこちに見える。しかし表通りはどうにも騒がしそうであまり気が進まない。もう一度適当な路地に入り込んでみた。
路地の中にもあちこちでちいさな宿の看板がかかっている。選びたい放題だとかえって迷うが、だいぶ歩いたところで一軒の少し垢抜けたホステルをみつけた。「11HOSTEL」という丸いサインがあり、ちょっと西洋風のロッジのような作りのドアを少しあけると、ソファが向い合せに置かれたロビーになっていて、従業員か客かわからない若者がまだ寝息をたてていた。
「你好」
声をかけるともそもそと起きてきてあたりを見回す。しばらく寝ぼけた顔をこちらに向けて目をしばたいていたが外国人の客と分かると少しあわてて、奥へ誰かを呼びに行った。ロビーの奥は階段になっていて、上からもう一人若い、さっきのよりはしっかりした感じの男が降りてきた。男は英語で宿泊かと確かめて言った。
「最上階の部屋が空いてるけど見てから決めますか?まだ早朝だから他の客が寝ているので静かに上がってください」
一緒に連れだって4階の部屋まで上がる。うす黄色いペンキに塗られた部屋に真っ白いシーツのベッド、シャワーもあり、窓からは漓江の流れと町の周りの奇妙な山が見える。一発で気に入った。
「いつこの町に?」
「今朝、深圳からバスで来ました」
パスポートを見せて、宿泊代の200元(4000円)とは別にデポジットを100元払う。デポジットはチェックアウトの時に返金される仕組みだ。
 

Yangshuo

 
部屋に上がって荷物を広げ、自宅を出てから30時間くらいでこんなところまでやってきたなあと思いながらさっそくシャワーを浴びる。蛇口をひねるとすぐに熱いお湯がたっぷりと出た。安宿(中国の高い物価のせいで日本と変わらない値段だが)とはいえ、設備に申し分なし。やっとすっきりした気分になった。教えられたWiFiのパスワードを設定してみるとネットにもすぐにつながった。しかし中国国内ではTwitterFacebookなどのSNSには接続できない。WiFiをOFFにして、香港のSIMで通信すれば通信料はかかるが問題なく接続できる。まあ使い分けよう。
 
つづく
 

このSIMを事前にっ買って持って行きました。大陸からでも検閲なくtwitterFacebookにアクセスできます。